育てることは育てられること
中間管理職の主たるお仕事は、私は人を育てることだと思っています。
もちろん会社から与えられた数値も達成しなければなりませんし、新しいプロジェクトの試行錯誤も必要でしょう。
毎日続くそのような多種雑多な忙しい仕事を通して、部下としてスタッフとして、彼らの力量を向上させていかなければなりません。
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しかしながら近頃では、職場のあちらこちらで、パワハラやセクハラやモラハラなどなど、少し口を開けばこのような言葉が飛び交っています。これでは部下やスタッフを育てようと思って注意したことでも裏目に出たり、「ハラスメントだ!」と言われるのではないかと思って、うかつには注意も出来ない風潮があることも事実です。
昔人間の私には、本当にやりにくい時代になったものだと感じます(笑)。
息苦しい社会になってしまったものです。ある人から言わせると、「なんでもかんでもハラスメントと騒ぐ、その発言こそがハラスメントだ!」という意見もあるくらいです(笑)。
もちろん職場でのハラスメントを予防することは大事ですし、「いじめ・嫌がらせ」などは絶対にあってはならないことですが、厚労省のパワーハラスメントの定義は、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」のだそうです。
ですからこの定義に抵触しない範囲ならば、職務を遂行していくために弊害になるようなことがあれば、ハッキリとダメなことはダメと注意をするべきだろうと思います。
ただそのためには、重要なことは、日頃からの職場内の人間関係がスムーズでないとやりにくいでしょうね。
そこでは、育てる側の上司としてのリーダーシップや人間力が問われてくることでもあると思います。
部下の最も望む「リーダーの条件」は、<上司の人間的魅力である>というデーターがあるくらいですから。そういった意味においても、中間管理職の皆さんにはステキな人間力をもった上司を目指して欲しいと願っています。
このようにして「教育」には育てる側のレベルが大きく影響しますが、片や、育てられる側にも、とても大きな要素があるのです。
育てられる側の部下達の、学ぶ姿勢や資質、仕事に取り組む態度、素直な考え方といった色々な要素がとても優秀だとしたら、教え甲斐もあり「もっと色々と教えてあげよう!」という気になりますし、教える内容もスピードも上がります。
もし、その反対だったとしたら、「やってられんな~!」ということになります。指示をしても反抗ばかりされていては、いくら人を育てるのが中間管理職の主たる仕事だと言ってもテンションは下がる一方です。
このように、育てられる側のあり様が、育てる側に多大な影響を与えるものだということは、育ててもらっている立場の人達はほとんど知りませんし、理解していません。
育てられる側は、良きに付け悪しきに付け、いつも育てる側の評価をしていますが、自分たちの、そして自分のレベルはよく分かっていません。
いつか、なにかの時に、指導する立場の者は、育てられる立場の人達に、「私を育てているのはあなた達だ!」と、お話ししてあげればと思います。
きっと、ドキッ!とされると思います。
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間違いなく、「育てる」という行為はそのことによって「育てられる」のです。
育てている間に、育てる立場の人間は、実に多くを学びます。いや、学ばざるを得ないのかもしれませんが・・・。そして、成長させられます。
少し話のポイントは違いますが、子育て中のお母さんを見ていれば、よく分かります。
産まれたばかりの赤ちゃんが、ものの三ヶ月もすれば倍近くの体重になりますが、毎日抱いているとそれを支える腕も次第に力強くなります。ところが、もし、赤ちゃんの体重が増えなければ、その必要がないため腕っ節も強くなりません。実に相関関係的に、うまく出来ています。また、ある大学教授の「母親の意識調査」によると、育児体験が母親を人格的に成長させ、あるいは変化させていることが示されたとの報告があります。
我が社の中間管理職にも、「一生懸命にスタッフを育てるということは、あなた方が今まで見えなかったものが見え、分からなかったことが分かる様になってきます。それは結局、彼らに育てられるからですよ。」と話しています。
「教える」ことは「教えられる」こと
それと同じように、「教える」ということは「教えられる」ことでもあります。
教えたことを部下やスタッフ達がキチンと履行してくれない時には、「何を聞いているんだ~!これはこの前に教えただろう!」と、怒鳴ってはいけません。
こういった場合はほぼ間違いなく、あなたの伝え方や教え方が拙かったのです。
もちろん前述のように、部下によっては理解力や仕事に対しての姿勢などの格差があり習得能力は違いますが、それでも教えていかなければ中間管理職の仕事は成り立ちません。
そんな時はしばしば落ち込むかも知れませんが、この様な場合、ではどう教えれば理解するのか、どうすれば行動に結び付けられるのかを、じっくりと考えてください。
まさにその考えるという行為が、彼らから「教えられている」ことなのです。
自分が十分に伝え切れていないところを教えてくれているので、むしろ、次の指導は組み立てやすくなります。
私は若い頃にフルコミッションセールスをしていた時期がありました。
その時の上司に教わったことですが、「お客様の<断り文句>をしっかりと聞いておきなさい。何十軒もセールスをしたら、きっと同じような断り文句に気付くはずだ。例えば、『高い』と言われ続けたら、君のセールストークの中で、『何故、この価格での販売なのか』という説明が十分でないことが判る。『品質』のことであればそのことを、『必要性』であれば、何故今この商品がお客様にとって必要なのかの説明が不十分だと判る。」
「お客様に、君のセールストークの弱点を教えてもらいなさい。」と言われました。
彼らとの毎日の葛藤の中で、「育てることは育てられること」「教えることは教えられること」をいつも念頭において、部下と共に成長していただきたいと思います。
あなたは多くの社員の中から選ばれた中間管理職なのですから・・・。
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