誉めること・おだてること
中間管理職におられる皆さんは、きっと何人かの部下をもっておられるはずです。
その部下の働きによって、業績が決まってきます。
自分が現場を走り回っていた頃は、自分の工夫一つで仕事をやり遂げた満足感に浸ることが出来たのに、問題だらけの部下を使って上層部から与えられた仕事をやり抜いていくという、ここに中間管理職のご苦労が凝縮されているのでしょう。
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理想的には、部下を意のままにコントロール出来ればよいのでしょうが、ロボットではあるまいし、一人ひとりが「意志」や「感情」を持っている人間であるのですから、そんなに簡単にいくはずがありません。
結局、中間管理職のお仕事は「人材育成の教育者」としての力量が、否応なく問われてくるのではないでしょうか。
人を育てるというのは本当に難しいものです。
私も小さいながらも会社経営をしていて、何度もこの壁にぶつかったものです。
以前に社員教育に悩んでいた時に、当時お世話になっていた税理士の先生から言われた言葉があります。
それは、「背雪埋井(はいせつまいせい)」という言葉でした。私は初めて聞くフレーズでしたので、その意味をお尋ねすると、先生は「文字の通り、<背中に雪を背負って、その雪で井戸を埋める>という意味ですよ。井戸の中に雪を投げ入れるとどうなりますか?」
「もちろん、埋まるどころかすぐに雪は溶けてしまうでしょうね。」
「そうですよね、でも諦めずに何度でも何回でも、重い雪を背負って井戸を埋める積もりでその作業を繰り返していくということです。人を育てるというのは、それくらい大変なことだということをこの言葉は教えてくれていると思いますよ。」と仰ったことを思い出します。
さて、部下に新しい仕事を与える時には二通りあると思います。
<出来ない>というところからスタートさせるときと、<出来る>というところから始めさせるときです。
これは同じ人に対してでも、事柄によっては使い分ける必要はあります。
<出来ない>ところからスタートさせる時には、手本を示してあげて、十分にその仕事の重要性を理解させて、そしてやらせてみる。それを何度か繰り返して行くことで、次第に出来るように成長して来ます。
この手法は、世の中間管理職のほとんどの方が実際にされている方法で、うまく行くことが多いのではないでしょうか。
しかしながら、もうご経験済みだとは思いますが、実は<出来ない>ところからスタートさせることは、時間もかかりますし、とても煩わしくて正直なところ面倒なのです。
それに反して、<出来る>ところから始めさせると、「君の実力なら、まったく大丈夫!楽勝だよ、問題ない!」と丸投げ状態で、上司にとってはとても楽なのです。
本当に実力のある部下に任せるのなら何も問題はありませんが、そうでもない者にさせる場合は報告を小まめにさせるなどして、十分に注意をはらわなければなりません。
部下をおだててはいけない
その時には決して「おだて」て、仕事をさせてはいけないということです。
しばしば勘違いするのが、「おだてる」ことと「誉める」ことを、ゴッチャにしがちなのです。
それは、上司でも部下でも勘違いをしがちです。
「誉め殺し」という言葉がありますが、本当は「おだて殺し」という方が正しいのだと思います。
おだてられると、本人も錯覚して自惚れて、遠からず自滅します。
「おだてる」と、結局その人を潰すことになります。
また、「ブタもおだてりゃ木に登る」という言葉もあります。
出来る能力もないのに、あたかも出来るように錯覚させることが「おだてる」ことなのです。
これは、私も人に使われている時に体験しました。おだてられていることに気付かずに、「自分は出来るんだ!」と過信して、そして見事に失敗しました。
その時に、「ヤラレタ~!!」とすぐに悟りました。
それからは、その上司には警戒心をもって接するようになりましたが、結局は潰されました。
きっと、自信満々で鼻持ちならない若造だったので、嫌われていたのでしょう。
自分に自信を持っている人間ほど、このワナに嵌りやすいのです(笑)。
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それでは、「誉める」とはどういうことでしょうか。
「誉める」とは<事実に基づいて賞賛する>ことです。その部下の、誰でもが認める「長所」を誉めて、「その部分を生かせば、この仕事は出来るハズだよ!」と励ましてあげるのです。
また、以前に成し遂げたその部下の成果や努力を誉めてあげるのです。
誉められるとその人の自信に繋がります。頑張る力が湧いてきます。
「誉める」ときには、事実に基づいているかどうかが重要なポイントです。
ウソも過大評価も混ぜ込んではいけません。
事実に基づいて誉めるのですが、その時にはハッキリと、その部下の注意をしなければいけない欠点も添えて話してあげると、その長所がより浮かび上がり、信頼感が増します。
この心理効果は絶大です(笑)。
でも実は、人を誉めることも難しいのです。それは、常日頃からその部下の長所や短所を含めた人間性を、よく観察する努力をしておかなければならないからです。また、その部下との信頼関係は不可欠です。
誉めることとおだてることでは、よく似ていますが、人材育成の結果は天と地ほどに違いがあります。
私もこのことが分かるまで随分失敗してきましたが、でも今でも「背雪埋井」の言葉の通り、一朝一夕にはいかない人を育てることの難しさを感じている毎日です。
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